昔々、カレーが日本に伝わって間もないカレーおじさんがまだ、柔道ベースの寝業師だと信じられていた頃のお話です。
そんなカレーがまだメジャーとはいえない時代にも好きな食べ物をカレーと答える少年はいました。そう安藤君です。
そんな安藤君のもとに一本の電話がかかってきました。
RRRRRR・・・
ガチャ
「やあ、勘の鋭いカレーおじさんだよ。
現状維持は衰退。カレーを過小評価すると君の足を壊しにいくよ。じゃあ。」
安藤君はその電話の意味することが全く分かりませんでした。
そもそもカレーが大好きでカレーを過小評価したことなどないからです。
安藤君は怖くなって仲良しの兄に相談しました。
「カレーおじさん?ああそれはきっと間違い電話だよ。カレーおじさんはカレーが嫌いな子のところに現れるんだよ。それに最悪、投げの時に受身さえ取れれば、パスされてもファラオガードで守れるし壊されはしないよ。
おじさんはパウンドは打ってこないからね。足?いや、それはきっと腕の聞き間違いだよ。」
そういうと兄はファラオガードを教えてくれました。
翌日、安藤君が友達の太郎君の家で遊んでいると太郎君のお母さんに
「安藤君、今日のお昼はうちで食べて行きなさい。出前を取るから好きなものを選ぶのよ。」
とお昼に誘われました。安藤君はメニューも見ず即答でカレーを注文しました。
数分後
「太郎、安藤君出前が届いたわよ〜。リビングにいらっしゃい。」
太郎君と安藤君は、リビングまで駆けていきました。
「さあ早く座って食べなさい。安藤君はカレーで太郎はラーメンね。」
席に着こうとした時、安藤君はふと兄の言葉を思い出しました。
【カレーおじさんは机の下に潜んでいることが多いみたいだよ。
まあ気になるなら念のため気をつければいいよ。】
安藤君は慌てて机の下を確認しました。そこにはもちろん何もありませんでした。
「さすがに考えすぎか。いけない、いけない。」
と一安心して椅子に腰をおろした瞬間でした。
突然椅子が動き出しました。そう安藤君が椅子だと思って腰かけたのは椅子に扮したカレーおじさんだったのです。
カレーおじさんは瞬く間に安藤君の足をガッチリとロックし信じられないくらいの力でアキレス腱を絞り上げます。
安藤君はたまらずタップします。
カレーおじさんはそんなものは意にかえさず
「惰性でカレーを食べるようなやつのタップは聞けねぇな。」
と言い更に強く絞り上げます。
安藤君は兄に習ったファラオガードを試みますがすでに足関に入られた状態では何の効果もありません。
逆にさらに深く極まってしまいます。
兄はファラオガードの形だけ教えてそのガードの持つ意味まで伝えてはいませんでした。
「現状維持は衰退!寝技の進歩は日進月歩!」
そう言うとカレーおじさんは外掛けからアンクルに切り替えます。
どうして良いか分からない安藤君は再度タップしながら
「ごめんなさい。カレーだけじゃなくいろんなものを食べるから。
でも惰性でカレーを食べているわけじゃないんだ!カレーが本当に大好きなんだよ。本当だよ。信じて。」
と叫びました。
するとカレーおじさんはニヤッと笑い煙のように消えました。
そこに一杯のラーメンを残して。
安藤君は引き寄せられるようにそのラーメンを口にしました。
「カ・カレー味のラーメン。こ・これぞ鬼に金棒!」
RRRRRR・・・
ガチャ
「やあ、勘の鋭いカレーおじさんだよ。カレー味は磐石。じゃあ。」
カレーを他の料理に応用するなんてことはカレーライスばかり食べている安藤君では絶対に思いつかない発想でした。
そしてカレーが好きでカレーばかり食べることは、カレーへの愛ではなくただカレーの可能性を潰すことなんだと気付かされました。
それからも安藤君のカレーへの愛が覚めることはありませんでしたが安藤君は好き嫌いなくいろんなものを食すようになりました。
そしていつしか安藤君はカレーだけでなくカレー味自体を世間に広めたいという気持ちをより一層強くし、カレー味を広げるためにカレー味にする元の料理としてラーメン作りの研究に没頭していきます。
そこで作り出されたのが手軽に食べられるラーメン・即席ラーメンの元祖チキンラーメン、そしてカップヌードルです。
その後、カップヌードルのカレー味を完成させることにより安藤君の夢は結実したのでした。
でもそれはまた別のお話。